約束を結ぼうとして伸ばした手は、君に届くことはなく。
僕の手をすり抜けていった君の体は、僕の手の届かぬところへ。
君の温もりの残る手を握りしめて、僕の体は二度目の喪失に震えた。
一度目は家族、二度目は友達。どちらもかけがえのないもの。
ただ君に頷いてほしかったんだ。たとえ叶わぬ願いでも。
君に選んで欲しかった。僕と現実の世界で生きること。
君は安らいだ顔をしていた。最後の時、しがらみから解放された君の表情は、ただ穏やか
だった。
君の望んだ幸せが、そこにはあったのかもしれない。
『一緒に帰ろう、ミツル…』
君を待ち受けているのが、つらい現実だとしても。それでも僕は、君と生きていきたかっ
たんだ。
僕たちが生まれ育った、あの世界で。
06/07/08
ミツルと再会前のワタル(香川
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