ふと、会話がなくなり、背中の重みが増したことに気づいた。
「・・・亘?」
亘の家のリビング、いつものように二人、それぞれお互いのすきなことをしながら(亘は主にゲームをしたり漫画を読んだり、美鶴は大抵本を読んでいる)たまにぽつりぽつりと話をしたりしていたのだが。数分前、ゲームに飽きたのか、じゃれつくように亘が背中に寄りかかってきて、重い、重くない、重いからどけ、美鶴だっていつもしてるじゃんと問答していたのだが。
いつの間にか亘の返事はなく、背中に重さ、それにプラスしてより鮮明な自分のものより高い体温が伝わってきていた。
「おい、亘。」
二度呼びかけるが返事はない。
「寝てる、のか。」
いやに静かな呼吸と、ザシュだとかバシュだとかグシャだとか、たくさんのいやに小気味良い音の後の悲しげな音楽でそれを判断する。格ゲーをしていた亘の、前者は亘があやつるキャラクターが攻撃される音で後者はゲームオーバーの音楽だろう。ゲームをしている途中に寝るなんて、器用にもほどがある。美鶴ははぁ、と溜息をついた。
「・・・亘、起きろよ。」
再び呼びかける。だがやはり返事はない。ただのしかばねのようだ。
「とか、こいつじゃないんだから。」
まったく。
振り向くに振り向けない、一度寝た亘は朝までなかなか起きないから、きっと美鶴が動いたら盛大に頭を打つ。体重はすべて美鶴にかかっているのだ。そんなのは気にせず乱暴に起こす、と言うのはさすがに気が引ける。それに。
「・・・背中、あったかいしな。」
合わさった背中がぽかぽかと心地よく暖かかった。きっとそれもあって亘は眠ってしまったのだろう。
「我慢するか。」
亘はいつ起きるのか予想もつかないけれど。そろそろ足がしびれてぴりぴりしてきたけれど。一度閉じた本の続きを再び開きながら美鶴は独りごちた。
せめて、この背中があたたかく心地よいうちは。
06/07/17
甘いの頑張ろうとして玉砕。甘いのかけません。(桂木
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