握った手は熱かった。
自分の手とは異なった温度。自分の冷たいそれとは似ても似つ
かないもの。
この手が美鶴を救うのだ。この手だけが、美鶴を救うのだ。
そう意識したら離せなくなった。
両手で大切に包んでから、逃げられないようにぎゅっと握りこ
む。
びくりと手の中のものが震えた。美鶴は祈るように、額を押し
付ける。どうか願いを聞いて。これは最後に与えられた幸運な
のだろうか。神様なんて信じていないけれど、最後の最後にな
ら信じてやってもいい。
両手に再び伝わる、震え。
それは確かに生き物だった。熱く波打つ、生き物。美鶴の手の
中で確かに存在する異物。
確かな熱を持って、美鶴と触れ合っている。
触れ合ったところがちりちりと痛んだ。火傷したみたいな、内
側に侵入してくる痛み。
熱と美鶴の手との境界線は強固で溶け合うことはない。美鶴の
手の冷たさが熱を弱めることはないし、この熱が美鶴の手を温
めることもない。
決して、相入れない。
どちらかがどちらかを滅することでしか終わることない。
これは太陽だ。熱い。眩しい。焦がれてしまう。そういうもの。
この手の中に、太陽がある。
美鶴は太陽に焼かれて死ぬのだ。
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